本作『ハーモニー』 (<harmony/>)で描かれるのは、病気も不健康もなく、精神的に有害なものが完全に排除された未来の世界である。
2015年には劇場版アニメ映画として公開され話題となったので、知っている方も多いと思う。
ただ、原作と小説には“決定的な違い”が存在するので、ネタバレしない程度に紹介したい。

ーハーモニーが異色なSF小説であるわけ
『ハーモニー』 (<harmony/>)は近未来が舞台で、衝撃的なテロ事件が物語を加速させるエンジンとなっているが、実は社会のシステムに取り込まれたオトナになりたくない少女という普遍的なテーマも扱っている。
子供達はオトナになると、「WatchMe」というナノマシンを体内に埋め込まれ、体が常に健康な状態になるように政府によってコントロールされるのが、『ハーモニー』の世界観だ。
しかし、主人公である霧慧 トァン(きりえ トァン)はオトナになる前に、過激な思想とカリスマ性をもった御冷 ミァハ(みひえ ミァハ)に出会うことで、同じように他者から健康をコントロールされる社会を嫌悪するようになる。
そして、“オトナにならない=少女のうちに死ぬ”ために自殺を試みるのだが、ミャハだけが死んで、トァンは同じくミャハに感化され一緒に行動をともにしていた零下堂 キアン(れいかどう キアン)と共に自殺に失敗し、「WatchMe」を埋め込まれオトナになった…というのがストーリーのキーポイントだ。
作者である伊藤計劃(いとうけいかく)の、リアリティーを首の皮一枚だけ残して、読者を一気にSFファンタジーの世界に引き込む文章が、物語の本質を難しくさせているが、序盤の出来事は、少女たちの行動こそ極端なものの、誰にでも経験がある思想だからこそ物語に入り込みやすいのだろう。
そして、物語が進むうちにミステリー的な要素もあり、ページをめくる手がどんどん早くなるストーリー展開は見事だ。
トァンが大人になってから意外な形で対峙する、小さな頃に家族を捨てていなくなった父とのやり取りや心の動きも、物語に深みを与えている。
SF作品だが、現代日本の社会システムに対する皮肉もたっぷりと含まれていて、普段、SFを読まない人でも読みやすい作品となっている『ハーモニー』 (<harmony/>)。
劇場版アニメをすでにみたという方で、本書をまだ読んでいない方はぜひ一度目を通して欲しい。
それは、劇場版アニメでは描かれなかったトァンの“本当の声”が、小説で描かれているからだ。
そして、その感情と行動は皮肉な形で“急かされた結果”生まれたものだと私は思う。(ネタバレになるのでここは伏せておく)
劇場版アニメ『ハーモニー』の後日談も原作小説では、“本である必要のある形で”伏線が回収されていて、非常に面白い趣向が凝らされているので、変わった小説が好きな人もきっと気にいる作品だろう。

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